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書籍・雑誌

2017年9月 3日 (日)

ライアの祈り(森沢明夫)

青森三部作の最後。これまで読んだ森沢明夫作品とは違う展開というか雰囲気(ありえないファンタジー風)が新境地だと思いましたが、しかしこれが終盤までかなり展開が眠い。一応、今まではダラダラながらも続けて読めていたのですが、これは途中で10回以上眠ってしまいました。個人的に、ファンタジー物に適性がないとはいえ本当に眠い話で、何度も途中放棄しようかと思いましたが、せっかくの三部作の最後だからと我慢して読んでみたら、結局最後はいつものパターン(いい話だけど、何か薄っぺらい)に戻ったように思いました。

三部作の中では、2つ目の「青森ドロップキッカーズ」が一番マシかと思いました。次が1つ目の「津軽百年食堂」かこの「ライアの祈り」かで迷うところですが、同点2位にします。「津軽~」は津軽蕎麦というおいしそうなメニューが登場するところで点を稼ぎますが、「ライア~」も最後の展開は(それまでと比較して)なかなかいいと思ったので、この二つは甲乙つけがたい。

森沢明夫を勧めてくれた人は、あと数作で全作品読破だそうですが、どうも僕は好きじゃないと言うか、映画やドラマ化されたら観ようと思う程度の好感度なので、たぶんしばらくこの人の本からは遠ざかると思います。戻るなら、また原田マハに戻ろうかと。まだ原田マハのほうが、僕の好みに合うというか、読み返そうと思います。とにかく、森沢明夫さんには緊張感と濃密感が薄い。読んだ後で、何だか損した気がするんですよね。

2017年9月 1日 (金)

青森ドロップキッカーズ(森沢明夫)

青森三部作の2つ目。主にカーリングにまつわるお話。1つ目の「津軽百年食堂」よりは面白く読めましたが、2回目を読もうと思わないのは相変わらず。中学生のいじめの内容も出てくるのですが、例えば荻原浩さんのような爽快(心地よい不気味さ)な扱いではなく、なんとなく読んでいて辛い描写と言うか表現になっているところが特徴でしょうか。

よく、この作者の話は「泣ける」と言われますが、大衆演劇の「泣ける」であって、なんとなく底が浅いというか、どうも心から「いいですね~」とは言えないところが歯がゆいと思います。いいお話なんですけれども、ちょっと物足りないような。教養が足りないと言うと悪口になってしまいますが、そんな感じ。

実際に綿密に取材したり勉強したりしてしっかり書いているのだけど、その取材内容が著者の中でじっくり熟成していなくて、活きはいいけど深さがないという感じでしょうか。すでに三部作の3つ目「ライアの祈り」を読み始めていますが、これは新境地な感じがしています。

2017年8月30日 (水)

津軽百年食堂(森沢明夫)

森沢明夫にハマっていて、あと数作で完全読破だという人に以前勧められ、「虹の岬の喫茶店」と「癒し屋キリコの約束」を読んだとその人に報告すると、「次は青森三部作なんかどうですか?」と言われました。この人の本は面白くないわけじゃないし、定期的に会うから無視するわけにもいかないので図書館で借りて、まず第一作目「津軽百年食堂」を読みました。

百年の歴史のある津軽蕎麦を出す大衆食堂に関係する人々の話。映画にもなっているそうです。まあ、普通にいい話だと思いました。この人の本はいい話だとは思うのですが、2回目を読もうとはあまり思わない、読みやすいけど軽いというか一本調子というか、そういう作風なのが弱点だと思います。読者の解釈の余地が少ないこともあって、映像化しやすいでしょう。実際、映画やドラマになることが多い。

津軽蕎麦が食べてみたくなりましたが、物語の舞台となる「津軽蕎麦を出す百年の歴史がある大衆食堂」が弘前には10軒ほどあって、でもそのほとんどが中華そば店らしいです。伝統的な津軽蕎麦は、作る(蕎麦を打つ)のが面倒で、幻のメニューとなっているとのこと。つなぎに大豆をすりおろした呉汁を使うのが一番の特徴だそうです。

2017年8月24日 (木)

母性(湊かなえ)

湊かなえの本を読んだことがあると思っていたら、初めてだったみたいです。ドラマ(夜行観覧車)や映画(白ゆき姫殺人事件・告白)やマンガ(少女)になっているものを観て、勘違いしていたようです。さらに、この人は1973年1月生まれらしいから、同級生です。

配偶者が「読んでいて怖くなったから、読んでみて」というので読んだのが「母性」。なるほど、母親が読んだら怖くなりそうだとは思いましたが、父親というか男性としては、ただただイライラする本でした。娘と母と祖母(祖母は母の母と父の母の両方)という4人の女性が話の中心になります。他に父の妹2名と母と父の共通の知人1名という3名の女性も出ますが、脇役。男は、父と祖父と父の妹の子の3人。脇役というか、大したことはしません。

という女性ばっかりの面倒くさい気持ちのすれ違いが延々続くところにまずイライラさせられ、母のダメさでまたイライラ。男のマザコンはよくある話ですが、女性のマザコンというのもいらっしゃるんですね。

そういう、勉強にはなるけど、二度目読んでみたいとは思わないような話でしたが、最後無理やりハッピーエンドになっていたのが救いでした。かなり強引ですが、まあ説得力がなくはない終わりかた。

2017年8月20日 (日)

長期不定期連載。

週刊新潮で矢作俊彦さんの連載が始まりました。「豚は太るか死ぬしかない」という、どっかで聞いたようなタイトルです。小説や物語ではなく、エッセイというのかコラムというのか、実話か創作かもわからない、でも見開き2ページだから他の連載より長いものでした。

記念すべき1回目の題は、「夏のマドリード 鰻の稚魚を思う」というもの。配偶者が「いつも、途中まで面白いんだけど、最後で何を言っているのかがわかんないんだよね、この人」との感想を述べておりました。言われて読み返すと、なるほど、そうだなあと思うのですが、いいじゃん、入試の試験問題じゃあるまいし、途中が面白ければ。とにかく、ウナギは鰻屋で食べたいんですよ。

それはそうとして、買ってから初めてわかった「長期『不定期』連載」という文字。「不定期」っていうのは、文字通り毎号載っているかどうかわからないという理解でよいのでしょうか? その理由について詮索はしませんが、とにかく「長期(中略)連載」だから、ある程度末永くお楽しみが続くということで、また生き延びる希望が1つできました。という人が多いような印象を持っています。

2017年7月29日 (土)

ARAKURE あらくれ(矢作俊彦・司城志朗)

「ゴールデンコンビ」と一部では強い支持のある矢作俊彦&司城志朗によって書かれた、たぶん初めてじゃないかと思うのですが、日本人を中心として日本での冒険話。今まで外国人や外国を舞台にしていて、我々日本人には人名や地名を覚えるだけでまず一苦労だったのですが、そういうハードルを取っ払った会心作。純粋にストーリーを追えます。

しかも、あまり血が出ません。人もほとんどお亡くなりにならない。持って回ったような気どった言い回しもなし。それじゃあこの二人の作者の魅力がなくなっているのかというと、そんなことはなくて、純粋に楽しく面白く読めました。今までは人に勧めるのが憚られましたが、これなら誰にでも勧められそうです。

あらすじを書いてもこの本の魅力は伝わりませんが、要するに幕末の刀が蔓延るご時勢に拳銃とライフルを得たヤクザ者が「俺たちはギャングだ」と賭場荒しをすることから始まり、やがて悪どく金稼ぎをする人の財産を強奪して貧しい人に配るようになり、講談師と仲良くなって自分たちの宣伝をしてもらい、やがて幕末の混乱に巻き込まれるという内容。

途中から著名なアメリカ映画“Butch Cassidy and the Sundance Kid(邦題:明日へ向かって撃て!)”と“Bonnie and Clyde(邦題:俺たちに明日はない)”を思い出しますが、結末もそんな感じ(より前者に近い内容)でした。とはいえ、僕たち世代にとってアメリカン・ニューシネマは身体感覚になっています(ハリウッド流ハッピーエンドには説得力を感じない)ので、たいへん納得のいく、説得力のある結末だと思いました。というか、アメリカンニューシネマより、体制側への配慮がすすんだ、よりフェアな結末です。グウの音も出ません。

2017年7月28日 (金)

癒し屋キリコの約束(森沢明夫)

「虹の岬の喫茶店」と一緒に、図書館で借りたのが「癒し屋キリコの約束」。1冊で判断するのはどうかと思ったので、保険の意味もこめて、もう一冊をその場で選択しました。これにしたのは、なんとなく。

「虹の~」から3年後の本だから、腕を上げているのか、これは面白いと思いました。再読してもいいと思います。面白要素とミステリー要素も加わり、話の内容も美談。「虹の~」は人に勧めるときには相手を選ぶ(あまり本を読まない人向け)けど、これは逆の意味で人を選ぶ(ちょっとぐらい読む人向け)と思いました。

当初、喫茶店のオーナーのほうに注目して読むわけですが、あとで店長のほうにも注目のエピソードが出てきて、怪しいというか悪役っぽいオーナーがいい人だったというか、怪しくなった理由もわかって、すっきりした読後感が得られます。これは天晴れ見事だと思いました。

TVドラマ(昼ドラ)化されているらしいです。内容は少々変わっているような感じです。きっと、ドラマでも面白く観ることができるだろうと思いました。

2017年7月27日 (木)

虹の岬の喫茶店(森沢明夫)

「森沢明夫がいい。読みやすいし、さりげない内容もいい」と人に勧められ、その人が例を挙げた「虹の岬の喫茶店」を読みました。

確かに読みやすいし、内容もいいのですが、僕は変態的に読みにくいけど、何度読んでも面白い矢作俊彦さんが好きだから、そういう意味ではちょっと物足りないと思いました。具体的には、再読しようとはあまり思いませんでした。「ああ、いいお話ですね」という感じ。原田マハでも、もう1回読もうと思うから、それより軽い。

舞台は同じ岬の喫茶店で、その喫茶店の客と店主のちょっとした日常の関わり合いが、季節移りになったオムニバスなんですが、それぞれの章ごとにはアイテム的な関連づけがしてあります。うまく作ってあると思います。でも「いい話ですね」という感じ。時間つぶしにはいいけど、なんか、もっとガツンとした本が個人的には好きです。

2017年4月 1日 (土)

ブロードウェイの戦車(矢作俊彦/司城志朗)

この二人がどういう書きかたをしておられるのかはわかりませんが、たぶんそれぞれがパートを決めて書いて、それを持ち寄ってお互いの文章に補足しあっているのではなかろうか? と想像しております。はっきり「矢作節」を感じられる部分と、そうじゃないところがあるから。

共著第一作目の「暗闇にノーサイド」もそうでしたが、手塚治虫漫画でシリアスなシーンで引き出しからママーが出てくるような、そういう「緊張と緩和」というか、妙な間の取りかたが心地よい娯楽作品だと思います。入念過ぎてさっぱりわからない状況説明も、わからないなりに勝手に想像できて面白いですし、わかりやすい情景説明に滑稽さがあって気持ちよくクスクス笑えます。

クライマックスまで延々引っ張って、盛り上がってからパーッとあっけなく終盤を迎える展開(実はまだ半分しか読んでいませんが)が想像できて、あー、矢作さんはやっぱり映画が作りたいんだろうな~と、いつも思うのでした。

2017年3月 8日 (水)

THE WRONG GOODBYE ロング・グッドバイ②

何度読んでも、いつ読んでも、どこを開いて読んでも面白い矢作俊彦さんの本の中で、まちがいなく1位か2位かという「THE WRONG GOODBYE ロング・グッドバイ」を、久しぶりに最初から通してちゃんと読みました。

「二村がなぜビリーにそんなに興味を惹かれたのかに説得力がない」という読者の意見(この本を読むぐらいだから、普通の人よりは矢作俊彦アレルギーはないはず)が多いですが、しっかり念入りに行数を割いて書いてあるし、その内容も僕には説得力がありました。と前から思っていたし、今回も「ちゃんと書いてあるじゃん。何でわからないのかな? 読解力がないのか?」と腹が立ちました。あるいは、僕みたいな変人(作者の矢作さん含む)には説得力があるけど、多くの一般大衆はそんなことはないのでしょう。

今まではそうでもなかったけど、今回はちょっとビリーに腹が立ったというか、二村がビリーが好きではなくなった気持ちがよりわかりました。この次の話「フィルムノワール/黒色影片」の二村の優しさとは違う優しさというか、だいたい二村は名前と減らず口(と大学野球でキャッチャーだったこと)だけが同じで、毎回違う人なんじゃないかと思わないでもないですが、そんな感じがしました。

何回読んでも、矢作さんの話は、最後の終わりかたがいいですね。村上春樹さんだと読後に必ずモヤモヤしますが、矢作さんはすっきり納得できます。実は、連載時の毎回の終わりかたもいいんですけど、いよいよ本当に終わるときの〆の言葉が格好いい。おそらく、矢作さんはいつも「最後の言葉」を決めて書いていると思います。そのため(あるいは、主人公にその言葉を言わせるため)にそこまでの話を組み立てるみたいな。男ですねえ。

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