ホンダ・インスパイア 32V
直列5気筒が特徴だった2代目インスパイアに追加された、レジェンド用V型6気筒3.2ℓエンジンを乗せた最上級バージョンです。北米輸出用(アキュラTL)で開発したものを日本でも、という趣旨のようでした。32Vというと、イタリアあたりのメーカーがフェラーリのV8エンジンを載せたセダンを「32V(32バルブのこと)」なんて命名してたのでそれを想起させられますが、インスパイアの場合は3.2ℓのV型ということのようです。
この32Vだけはボンネットフードがグリル一体型で(直5版はボンネットを開けてもグリルがバンパー側に残る)しかも自立式、バンパーも大きくて立派(昔のクラウンなんかが5ナンバーと3ナンバーでバンパーを変えていたことを思い出しますが)で、外観の高級感が相応にありました。インテリアも初代同様本物の木目が使われていて、日本車としては秀逸だったと思います。
見た目はそういう感じでなかなかなんですが、走らせると、なんじゃこりゃ?でした。アコードインスパイアのときに2ℓでもトラクションが足りなくて、発進時にちょっと深くスロットル(アクセル)を開ける(踏む)とホイルスピンしましたが、この車の場合40km/hぐらいからの追い越し加速でもホイルスピンします。ハンドルが軽くて握りが細身なのはジャガーみたいに上等そうでいいのですが、ちょっとした路面の不正で足回りがかなりバタバタします。バネが硬いわけでなくて、かといってボディが柔いのでもなく、全体にバランスが取れていない感じです。乗車時は「ルーフの低い車だな」ぐらいで普通に乗り込めますが、下車時に地面が遠くて足が宙をさまよいます。実際にフロアも高いんですが、シートなどの設計というかデザイン全般が煮詰められていないから、地面が遠く感じられるんですね。のちに(現在)「低床・低重心」をうたうメーカーだとは思えませんが、ホンダにはよくあることなのでまあいいでしょう。
心に残ったのはエンジンです。レジェンド用(ハイオク指定)をレギュラー仕様の低回転型に変えているのですが、それでもショートストロークで高回転を好む素性は隠せず、シュンシュン回って気持ちのいいエンジンでした。ブロックから下はNSXと同じ血統ですからね。下のトルクが足りず、すぐシフトダウンするATと併せてあまり高級感のない走りでしたが、軽い(1500kg)ボディというのもあって、トラクションが足りなくてホイルスピンするのもなんのその、直線ではなかなかの加速をしてくれました。
要するに販売開始前にどういうチェックをしたの?と不思議になる車で、これを北米の高級車チャンネルで日本のスカイラインみたいなスポーティーな中型セダンとして売るのはちょっと無茶でしょうと思いましたが、案の定大失敗したようです。一番安い設定で300万円以下の戦略価格だったのですが、初代の人気を活かせず日本でもあまり売れませんでした。次期TLは普通の横置きエンジンになり、カムリに対するウィンダム路線に移りました。日本でもそれをインスパイアとして販売しました。
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